金融取引を始める架け橋となるか バイナリー・オプションの自己規制について

概況


今回は、今大人気のバイナリー・オプションについて杉本課長流に斬ってみよう。

まず、皆さんはバイナリー・オプションという商品をご存じだろうか。FX取引会社や証券会社でさまざまな種類のバイナリー・オプションが個人投資家向けに販売されている。この中で最もシェアの高いGMOクリック証券のバイナリー・オプション「外為オプション」を例にとって商品内容を説明しよう。

外為オプションは、購入受付締切時間に設定される「STARTレート」と、購入受付締切時間後に設定される満期の「ENDレート」を比較し、一定のレンジ内で「円高か円安」または「ドル高かドル安」どちらになるかを予想する金融商品だ。

取引時間は、月-金曜日の8時00分-翌午前4時10分で、注文の受付期間は10分間でその直後の為替レートが「STARTレート」となり、その後の10分間後の満期時の「ENDレート」を比較する。なんと1日に236回も取引チャンスがある。

単純に円高か円安かの上下を予測して、当たれば2倍、外れれば0となる商品だ。ただし、「STARTレート」からほんのわずかな上下幅だけがレンジ外となって、上下どちらに予想しても外れる仕組みだ。

このレンジ外の幅は、その時点の為替相場のボラティリティ(価格変動率)によって定まり、購入時点では開示されている。

このバイナリー・オプションが個人投資家に大人気で、約定金額が大きく伸びている。

人気の理由は、単純に上か下かを当てるだけの簡単な仕組みであること、また、最大損失が投資金額に限定されること、10分などの短期で勝負がつき、スマートフォン(高機能携帯電話、スマホ)やタブレットなどのモバイル端末で簡単に取引が可能な事だ。

まあ、正直言って金融商品というより、投機、賭博、ゲームなどの感覚で遊んでいる投資家が多いのであろう。

しかし、このバイナリー・オプション自体が金融商品であるのか、それとも賭博に当たるのかの判断は、今までなされなかった。たった10分間で勝負が決まり、これを受けている会社自体が、顧客の注文を為替市場でヘッジすることが非常に難しい商品だ。単に、自社が胴元となって顧客に上下を予想させ、払い戻しをしているので、賭博と何も違いがないとの批判が多かった。

これに対応して、業界では自主規制を検討しているようだ。次の4項目が今後の自主規制に盛り込まれるようだ。

(1)正しい知識の提供
(2)過度な取引の抑制
(3)顧客保護・顧客利益に資する商品設計
(4)適切な取引条件による商品の提供

今回、GMOクリック証券は自主規制の前に、損益実績を発表している。(表参照)。この表を見て、皆さんはどのように感じるであろうか?

GMOクリック証券のバイナリー・オプション損益実績
総取引金額に対する
総支払金額の割合
取引口座に対する
損失発生口座の割合
2011年3月 102.49% 48.12%
4月 97.04% 66.70%
5月 95.92% 70.20%
6月 96.75% 65.64%
7月 96.69% 66.21%
8月 97.83% 65.78%
9月 98.09% 65.93%
10月 99.51% 61.51%
11月 97.89% 69.24%
12月 98.42% 68.51%
2012年1月 98.70% 67.87%
2月 97.65% 69.70%
3月 98.36% 70.08%
4月 99.50% 68.40%
5月 98.81% 70.13%
6月 97.33% 72.40%
7月 100.07% 67.21%
8月 97.89% 71.18%
9月 99.81% 67.66%
10月 98.95% 69.99%
11月 97.95% 72.10%
12月 98.90% 67.46%

杉本課長は、「意外にもうかっている顧客の比率が高いな、また総取引金額に対する総支払金額の割合も98-99%程度とかなり高いな」と感じた。上下を当てさせるので、レンジ外を除けば、単純な勝率は50%程度になるはずだ。直近の実績では約7割の顧客が損失を出している。逆に言えば、3割の顧客が月次で損益がプラスとなっている事になる。また、総取引金額に対する総支払金額の割合もほぼ98-99%程度になっている。

この商品を金融商品として考えると、数学的には長く、数多く投資するとレンジ外にはまる確率があるので、全体としては損をするはずの商品となっている。しかし、公営ギャンブルなどと比較すると非常に勝ちやすいと言えよう。

75%の払い戻し率の競馬などで、さて月間の損益で3割もの顧客がプラスになっているのであろうか?

公営ギャンブルの場合、匿名で馬券を購入可能で、特に購入制限などもない。

GMOクリック証券では現時点では1回5万円、1月21日からは3万円までという購入制限があるようだ。

金融商品なので、本人確認をした口座で、適度な購入制限や、1日の最大損失額の設定などを行う事が可能だ。

杉本課長は、バイナリー・オプションが、いままで投資を行ってこなかった層が、金融取引を始める架け橋となる商品となる可能性があると思う。

何とか、現状の商品性は残したまま、顧客の取引状況の開示や、最大損失額の設定などの設定で上手く自主規制して欲しいものだな。

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