為替相場2014年のトレンド テーマは徐々に「世界経済の成長」へ

概況


ドル円、110円超える水準目指す展開を予想

鈴木健吾氏

鈴木健吾氏

みずほ証券投資情報部
チーフFXストラテジスト 鈴木健吾氏に聞く

外国為替市場では、2013年も円安が進んだ。円安によって日本経済の好転や株高につながっている。14年の為替相場はどうなるのか。みずほ証券投資情報部チーフFXストラテジストの鈴木健吾氏に世界経済とともに、13年の相場展開を振り返っていただき、その上で、14年のポイントと相場見通しなどについて聞いた。

■2013年の為替相場

13年の為替相場を振り返ると、欧米を中心とした先進国の復活、もしくは復活に向けた兆しがテーマだったといえる。13年年初から12月初めまでの主要通貨の騰落率を見ると、多くの通貨がドルに対して下落、つまりドルは上昇している。ドルが全面高に近い動きを示した一年だった。リーマン・ショックの落ち込みからいよいよアメリカが立ち直りつつあり、金融政策も量的緩和のペースが拡大から縮小に転じることを背景としている。一方で、円はほぼすべての通貨に対して下落している。円は全面安だったといえる。これは、アベノミクスや、黒田日銀総裁の異次元緩和という政府や日銀の政策が評価された格好だ。さらに、為替市場全体で買われた通貨、売られた通貨を見ると、円に対して買われた主要通貨は順にユーロ、スイスフラン、ポンド、米ドルと、まさに欧米先進国の通貨だ。一時崩壊が懸念されたユーロは現在ではそのリスクが後退した。イギリスも、金融緩和政策を通じて景気が徐々に良くなっている。アメリカも同様の展開だ。対円で売られた通貨というと、南アフリカランド、ブラジルレアル、トルコリラ、豪ドルと、新興国・資源国通貨が並んでいる。このように13年を全体的にとらえると、新興国・資源国から先進国に資金シフトしたことがよく分かる。サブプライム・ショックや、リーマン・ショック、ギリシャ債務問題などで07年以降、世界の金融市場を揺さぶってきた元凶である欧米の経済が13年に復活して、かなり明るさが出てきたとの動きを見ながら、新興国・資源国から欧米に資金がシフトした様子がうかがえる。円に関しては、アベノミクスに対する期待と日銀の金融緩和が評価されて、全面安になった。

■2014年のテーマと相場ポイント

来年序盤の注目点としては、米国の量的緩和縮小(テーパリング)についてFRB(米連邦準備制度理事会)が今後どのようなペースで縮小していくのか、欧州では、政策金利がゼロに近づいた欧州中銀の次の一手はどうなのか、など欧米金融政策の動向が挙げられる。さらに日本サイドでは消費税増税があることでその対応策として日銀がどのタイミングで追加緩和に踏み切るのかなども注目されるなど、日米欧の金融政策に注目が集まりやすい中で、13年の「先進国の復活」をテーマにした動きがそのまま続きやすいとみている。その後の基本的なシナリオは、13年のテーマとなった「先進国の復活」から「世界経済の成長」へとテーマが徐々に移っていくと考えている。これはアメリカが緩やかな経済成長を継続する、アメリカに日本や欧州も何とかついていく。加えて中国が先の「3中全会」で打ち出したさまざまな構造改革を徐々に実行に移していく。日米欧中の経済が広がるにつれて世界経済全体の成長加速が次のテーマになっていくのではないか。為替市場では、13年に新興国通貨・資源国通貨が売られて、先進国通貨にマネーがシフトしたが、今年後半から徐々に世界経済が成長・拡大していくにつれて、投資マネーがより高成長や高金利の国や通貨を探し始める中で、再び新興国・資源国通貨へとマネーシフトが起きるという展開を予想している。

■ドル円の相場展開

ドル円に関しては、ここからさらに110―115円をトライしていく流れになると想定している。円安のパターンとしては13年と似たようなコースを描いている。5月から7月にかけては109円前後まで上昇するとみている。アメリカサイドでは、財政問題の解決や量的緩和縮小の継続、経済指標の緩やかな成長などが予想される。日本サイドでは、1―3月の消費税増税の駆け込みで経済指標は上ブレしやすく、これはアベノミクスへの信認などから日本株の上昇と円安につながりやすい。また、消費増税後には日銀に対する追加緩和期待が強まるだろう。その後、夏場にかけて、日本サイドでは、実際に消費増税の悪影響が出始め、経済や日本株がピークを打つ可能性がある。米国サイドも、「Sell in May(5月に売れ)」ということわざがあるが、循環的に指標や株価が夏場にかけて落ち込む傾向にあることで、ドル円は104円ぐらいまで下押す場面も予想される。その後、年後半は「世界経済の成長」が加速する中で、米経済の成長やリスク・オンが強まり、ドル円が110円を超える水準を目指すという展開を描いている。

■リスク要因

当メーンシナリオのカギは日米欧中の経済がしっかりと成長するかにあるが、これを 覆す要因も注意する必要がある。例えば、中国ではシャドーバンキングがある。影の銀行といわれ、規制もあって銀行を通じない貸し出しが焦げ付いたり、問題が広がったときに大きな混乱が起きたりする可能性はある。日本では消費税増税をきっかけに景気が一気に落ち込むリスクもないとは言い切れない。欧州ではギリシャ債務問題も追加支援の要請もあって不透明感が完全には払しょくされていない。アメリカもテーパリングをきっかけに長期金利が急上昇したり、これが株の急落につながったりするリスクや、債務上限問題が深刻化するリスクもある。しかし、メーンシナリオとしては、日本はこれまでの難局を乗り越えて「失われた10年」の克服ができるかもしれないという期待が広がっている。良い方向にスパイラル的に回っていくというのがわれわれの見方だ。

■中長期の相場シナリオ

われわれは1年前のシナリオを変えていない。その時から一貫して「今後数年円は全面安になるだろう」という主張がメーンシナリオだ。07年から11年にかけてドル円は124円から75円台まで50円も円高となっている。当時は円全面高だった。その円高の理由が逆転し始めるとの見方を1年前に示したが、その流れが現在も続いている。円全面高時にはどんな外貨を保有していても損したのとは逆に、今後数年はどんな外貨を保有していても程度の差こそあれ利益が出るのではないかと考えている。その要因は3つある。1つ目はマネーフロー(資金の流れ)。貿易収支を含めた円売りのフローが強まっている。また、公的年金運用改革に伴い年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国債運用を抑えて外貨資産にシフトするほか、NISA(少額投資非課税制度)導入で個人が投資信託を通じて外貨資産に向かうことも無視できない円安要因となろう。2つ目は国内要因。主にアベノミクスと日銀緩和。12年11月14日に当時の野田総理大臣が解散宣言、11月15日に当時の安倍自民党総裁が講演で「問題点はデフレと円高」と指摘、円高克服が「失われた20年」脱却のために必要と発言していることで、アベノミクスの成功=円安、株高といえる。安倍内閣が今後も強力にアベノミクスを推進させていけば、今後数年は円安要因となる。また、黒田日銀総裁は「2年後の物価目標2%」達成のために、追加緩和に踏み切らざるを得ず、これも円安圧力につながる可能性が大きい。3つ目が海外要因。BIS(国際決済銀行)の調査によるとドル、ユーロ、円、ポンドの4通貨で1日の外国為替取引の約8割を占める。07年のサブプライムローン問題、2008年のリーマン・ショックを通じて米経済が混乱する中でドルが買えない状況に。09年以降はギリシャやポルトガル、アイルランドなどの欧州債務危機でユーロ崩壊といわれる中でユーロが買えない状況になった。そうなると消去法的に円が逃避先としてマネーがシフトした。しかし、ここにきてアメリカの経済が復活、ユーロ圏の債務問題も山を越えてきたことでマネーは逆流して円安要因となっている。こうした動きは中長期的に続く可能性が大きい。

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